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中尾彬さんに学ぶ生前整理の大切さ

本記事は5月16日に心不全のため81歳で亡くなった俳優、中尾彬さんの様々な記事を拝読し
私なりの主観も交えつつまとめた内容となります。

はじめに

私が中尾彬さん(以下、中尾さん)を知ったのは小学生の頃、当時流行っていた学園ドラマがきっかけでした。
当時の配役は教頭先生で、幼ながらに高圧的な印象だったと記憶しています。
その後、CMやバラエティ番組、情報番組などで拝見するたびに印象はどんどん変わり
とても紳士で素敵な年齢の重ね方をされている愛妻家の印象が強くなりました。

報道を拝見した時は衝撃が走るとともに、一時代を築いた名優がまた一人亡くなってしまった事に
もの悲しさを覚えました。
もちろん、お会いしたこともありませんし、直接お見かけしたこともありません。
ですが幼い頃から作品を拝見していたからか、勝手に親近感が湧き現在キーパットを叩いている次第です。

生前整理を始めたきっかけ

中尾さんが生前整理を始められたのは今から約11年前の2013年頃だったそうです。
病気がきっかけで死について考えるようになり、そんな矢先に沖縄にある一棟の別荘の定期的な掃除が面倒に感じられ”物”に対する考え方を、もう一度整理されたそうです。

そこから生前整理を始め、趣味だった骨董や絵画、中尾さんを象徴する”ねじねじ”など本当に数多くのものを
手放し、中でも思入れのある絵画などは生家のある木更津市に寄付されたそうです。

手放す際の心得

まずは価値観は人それぞれ違うということ。
弊社も遺品整理や生前整理をさせていただいている中で、「大事なものだから」と親に言われた書画や骨董をどうするべきか、困っているなんて話を聞きます。
もちろん様々な方面で収集された思入れのある品物の数々は、ご本人にとってはかけがえの無い大切なものである事は間違ありません。
ですが、ご遺族にとってはそうでもない場合を多々お見受けします。

「私は絵をずっと集めていて、倉庫に入れて管理していました。実は最初、買い取りをする業者の方に整理を頼んでいたのです。しかし、価値観というのは人によって違うものですよね。  いろいろと調べ、私は500万円くらいの価値がある。そう見込んでいたものの査定をお願いすると250万とか100万とか言われる。向こうは商売ということがわかっていても『ちゃんと価値がわかっているのかな』と思ってしまって。それに最終的にどこに売られるかもわからないですからね。  だったら別に一銭にならなくてもよいから、大事にしてくれるところがよい。そう思い、生家のある木更津市の方に絵は全て寄付しました。ずっと預かってくれますし、いつか展示もしてくれるでしょうから」

現代ビジネス記事抜粋

整理をする場面で思入れのある物ほど、その手は重く、その時代にタイムスリップしたかのような感覚になります。
中には購入した際は高価だった物や、まだ使えそうな物まで多岐に渡ると思います。
中尾さんは生涯数多くの絵画や骨董など収集された中で、それらを手放す際に何を心がけていたのでしょうか。

「『もったいない』そう考えるのが一番ダメ。使うのはタブーだと思った方がいいです、何もできませんよ。
とはいえ、なかなか決断できません。整理するときに迷ったものを置いておく場所を作り、1週間何もしなかったら行先を考えよう。そう夫婦で決めました。
その一呼吸があることで、いろいろ思い出しますよね。どんな経緯で手に入れたのか。譲ってくれた方とどのような関係だったのか。そうした中で次第に決断ができるわけですよ。
ちなみに写真が一番整理がしやすかったですね。春夏秋冬大事な瞬間を収めたものがあれば十分ですよ。そもそも、こういう商売をやっていると、どこで誰と取ったのかわからない写真がたくさんあるので、意外と整理するのには難儀しませんでした。
そうして整理して残ったのが本です。一番多いですかね。本は学校というか、いつ読んでも学びがあります。今読んでみて、30代、初めて手に取ったときにはこの本のことを全くわかっていなかった。そう思うことも一度や二度ではありません」(現代ビジネス記事抜粋)

その後の心情の変化

数多くの物を手放したその後、中尾さんは生活圏や目線が広がったと記述されていました。
物を所有するということは、それらに対する維持コストが生じます。おそらく、それらが軽減され今まで以上に人間の根源的な感情に向き合えるようになったのでは無いかと考えます。

「どうして、整理をしようと思ったのか、(男なら一度は別荘を持ってみたいと思って60歳のときに購入した)沖縄のマンションの話からさらにさかのぼると、やはり病気がきっかけだと思っています。入院し、死を考えるようになった。しかし、それで生還してきました。
朝目が覚めて窓を開けて、登ってきた太陽を見て『よしまた一日を頑張ろう』日に日にそう強く思うようになりました。そして、意外と今まで、様々なものを蒐集してきたけれど、意外と何もなくても良いのだなと思うようになったのです。
そのために、まずは余分なものをひとつずつ片付けていこうと思ったわけです。それで戸棚を見てみるとそもそも何が入っているかわからないことに気が付きました。それで、ひとつひとつ開けて整理してみる。すると意外といらないものが多い。
ひとつ片付けると次は隣の戸棚と気になり始めて。不思議なものですよね。ただ、片付けてみると、この部屋にはこの置物が合うのではないかと、新しいものが気になり始めたりもして。難しいところですよね。
こうしてものが減ってきて身軽になると、生活圏と言いますか目線が広がったように思うのです。振り返ってみると沖縄にマンションが、木更津にアトリエがあったときは『定期的に行かなければいけないもの』と思ってしまい、その存在が負担になっていたように思います。
一生懸命生きてきて、定年などを一区切りにして、違った世界を見てみたい。そういう夢は皆さんあるでしょうね。頑張ってきた勲章として、別荘が欲しくなる方もいるのでしょう。
でも、意外とやってみるとつまらないものですよ。体力的にも大変で通い続けられない。別荘を買ったりしたいのなら、若いうちに借金をしてでも買うべきだと思いますよ。
別荘などを手放し身軽になった今、日本人の季節感と言いますか、おいしいものの旬と言いますか、そうしたものを意識しながら、行きたいところにフラッといけるようになったのではないかと思います」

現代ビジネス抜粋

生前にお墓を作った意味

とはいえ、いざ整理を始めようとしても整理ができない、なかなか向き合えない方も多いかと思います。
中尾さん流の向き合い方です。

何もしてないからだよ。まずはやっちゃう。もちろん、体の弱っているときには無理ですよ。そして、始めるときのポイントはでっかいものからやってしまうことです。
でっかいというのは物の大きさというよりは心に占める割合の大きさですね。これに手を付けたのだから、他もやるしかない。そう思えるものから始めるといいですよ。
私たち夫婦の場合は、お墓をつくったことだったと思います。私は中尾家を離れて弟にすべてを譲った身です。志乃の親もすでにいません。そうすると自分たちはいつどこに埋まるのだろう。そういうことを考えるようになりました。
『じゃあお墓をつくろうか』
そう話し合い、いざ作ってみるとゴールがやっと見えて楽になったんだよね。大切なものという意味ではなくて、心の中を締めている大きなものを整理していけばよいのではないでしょうか」

現代ビジネス抜粋

おわりに

頭では分かっていても実際行動に移すことが難しい「生前整理」。
少し強い表現になるかもしれませんが、誰しも必ず亡くなります。
様々な文献や現状を拝読、拝見している中で「所有した人にしか、その物の価値は分からない」「〇〇(故人様)に直接に聞けたらなぁ」
というシーンによく出くわします。
元気なうちに死について考えるのは決して”死への準備”ではなく”残りの人生をより良くする為に”と捉えると
また少し違った人生観に出会えるかもしれません。

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